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やっぱり彼と別れるなんて、考えられなかった。夢中で旅雑誌を読む彼の後姿を見ながら、私はちょっとした悪戯をおもいついた。私は彼の真後ろで、別の雑誌を手に取って読むフリをしながら、彼が私に気付いてくれるのを待ってみた。
彼は、私には気付かないまま真剣に旅雑誌を読んでいる。
私は退屈して手に取った雑誌に目を落とした。そこには、
『クローン人間を1週間でお届けします』
という記事が載っていた。私の心臓は高鳴った。
「なにこれ?」
記事を読み進めてみると内容はこんなものだった。
『お子さんが生まれたら、是非、当社のクローンバンクにご登録ください。お子さんに、もしものことがあった時、お子さんのクローンをお届けします。』
私が呆然としていると、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。
驚いて振りかえると、その声の主は彼だった。
彼は怖い顔をして、私の持っている本を黙って棚に戻した。 |