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185 にべもなくない女の子
2008年11月5日(水)

その日、スーパーで私の買い物のレジ打ちをしてくれたのは、二十歳前後のお嬢さん。客の少ない時間帯で、私の後ろには順番待ちしている人もなく、また、お嬢さんがいかにも話しかけやすそうな私好みの純朴タイプだったもので、ついついレジ打ち中に訊いてしまった。
「このニベって、どう調理したが美味しいのかな?」

「ニベ」とは魚である。っつーか、世間一般はご存知かもだが、そういう名の魚がいるんだということを私はその日初めて知った。切り身加工済みな4枚入りパックにて、「ニベ」と書かれて売られていたのだ。最近のお店では「生食用、煮物用」など調理法も記載されて売られているものが多いが、ニベにはなにも書いてない。「にべもない」とはこのことである。っつーか、待てよ。これはもしやして、その語源な「ニベ」でなかろうか。生存時の正体は不明な切り身状態なれど、こりゃあ、俄然喰ってみたいぞ。白身魚に見えるけど、どう調理するのが美味しいのかしらん?
鮮魚コーナーの店員さんに訊きたかったが、生憎無人だったので、まぁイイかとカゴの中に放り込み、そして上記のような流れから、レジのお嬢さんに質問しちゃったワケなのであった。

んでだ。私も、こんな若い女の子に魚のことを訊いても分かんないだろうなぁとは思っていた。案の定、速攻で、「分かりません」と返された。でも、その後が良かったのだ。
「分かりません。即答すみません!」
ぴょこんと頭を下げ、恐縮するお嬢さんの可愛いこと。「即答すみません」というのが初々し過ぎるじゃないか。萌えだ。萌えたぜ。
いやいや、こっちも知らないんだから。ごめんね、などと言葉を交わして、精算を終え袋詰めしていたら、さっきのお嬢さんが小走りに寄ってきた。
「あの、ニベは衣を付けて油で焼くのが美味しいそうです。塩焼きにも出来ます」
なんと。お嬢さんはわざわざレジを離れて、鮮魚コーナーまで訊きに行ってくれていたのだった。急いだのだろう、はぁはぁ言ってる。なんてイイ娘だ、胸キュン過ぎる。私もハァハァで萌え度Max。心からありがとうとお礼を言って笑顔で別れた。袋詰めを終えてスーパーの出口からレジを振り返ると、女の子はもう一度私にお辞儀をしてくれた。

ここ数日はこのエピソードを思い出す度にほんわかしている。にべもなくない女の子のさりげない親切が何度でも染みる。袖振り合うも多生の縁とや。私もすれ違う人達にかくありたいものである。ニベに万歳。うん、美味かった。

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