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137 張り込み
2006年5月11日(木)

数年前、ダンナちゃんの職場の各部署にこんな通達があったそうだ。
『敷地内で私服警官が張り込みをします。みだりに話しかけたり窓から覗き見したりするべからず』

なんでも、職場の近所に「ヤ」の字のつく方が住んでおり、その人物に何らかの疑惑なり容疑なりが掛かった。捜査の一環として張り込みをする。その見張り場所としてダンナちゃんの職場が選ばれたンだらしい。
つまり、会社の敷地内で妖しげな男を見かけても、それは張り込み中の刑事であるから安心してね。張り込みしてるのが「ヤ」のつく人にバレると困るから、皆さん、見て見ぬ振りをしましょうね、というお達しだ。

ダンナちゃんも含め、大抵の方は私服警官も張り込み捜査も、滅多に拝めぬものであろう。みな、興味津々であった。様子を見たくて溜らない。でも、あからさまに覗き込んで捜査妨害をしてもイケナイので、勢い柱の影だとかカーテンの隙間から庭を伺うことになる。

私服警官は木立の影から「ヤ」さん宅を見張っていたらしい。それを更に見張る(見守る?)柱やカーテンの脇からの複数の影。なんや、笑える光景である。刑事さんというと、私も本やTVの中でしか知らないが、ハタから分からぬご苦労があるのだなぁと思った。見張る側がじっくり見られててどうするよ。

ダンナちゃん曰く、「刑事は、木立の間から体を斜めにしてヘンな体勢で見張っていた。ものすごーく不自然だし、その割にあんまり体が隠れているようにも見えなかった」 ということだが、張り込みのプロでさえそんな感じなのだったら、にわか張り込みの社員の姿はどうだったのだろう。きっと、大した見物であったに違いない。私もその現場を拝みたかったなーと、つくづく残念に思うのである。

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