045 温もりに飢えた野獣たち
昨夜はしし座流星群が夜空に舞った。自然の不思議。宇宙の神秘。星の歴史。そんな畏怖の念に打たれた方も多かったのではないだろうか? そんな中、ワタクシは美しき天体ショーを眺めながら、高校3年の時の事を思い出していた。
その時も、夜空には美しい星々が瞬き、その下界には有象無象な人間どもが当然居たのであったのよ・・・。
高校3年。つまりはお受験生の身でありながら、ワタクシは学校の天体観測に参加遊ばしていた。
参加希望の書類を保護者印付きで担当教諭に渡した時、「いいのか〜。オマエ受験生だろ〜が〜」 とセンセイに釘をさされたが、そんなコトま〜ったく気にしなかった。
受験とはたった1日勉強せぬから、と言って落ちるものでもあるまいよ、と思っておったのである。それで、実際に落ちていりゃあ、世話はないのだが(ぴーしゅけは一浪さん)、ワタクシその事については現在もちっとも後悔していない。っつーか、落ちたからこそ「あの時行っといて良かったなぁ〜」と思うんである。
受験勉強一色(って程勉強してないけど)な高校3年生の暗い1年間に彩りを添えてくれる出来事はこれくらいっきゃナイからだ。高校生の私にはその時の私にしか出来ない事が確かにあった! と思う。それはそれでエエんであります。文句言うのは我が親御殿のみ許そう。
さてさて。話を戻して。
とにかく、天体観測に参加しちゃったワタクシであったが、確かその時はオリオンとかカシオペアとか、その辺りを観察したんだったと思う。先生が強力な懐中電灯で1個1個星を示しながら丁寧に解説してくださった。これがかなり分かりやすいんだナ。
「おお〜星の指示棒はライトでOKなのね〜!」 なんて妙な所に感心することしきり、なワタクシ。
星の動いていく軌跡なんかも写真に撮ったりなんかして、それはそれは興味深く、楽しかった。
そして、夜半過ぎ。ワタクシ達は一旦部屋に戻って、夜食を食べる事にした。
理科室でコポコポ湯を沸かし、思い思いに持ち込んだインスタント食品やお菓子を喰おうというのである。まだ秋も始めの季節だったというのに、その日の夜間はかなり冷え込んだ。
「寒いねー寒いねー」 と言いながら皆でカップ麺の容器に湯を注いだ。
で。3分経って、それぞれの夜食が出来上がると・・・。
皆のワタクシへの視線が熱い。
その頃、カップ麺の流行りは<焼きそばUFO>だったのだ! つまりは全員が焼きそばを買っていらっしゃった。その中でワタクシだけが<カップヌードル>だったんである。単に焼きそばを喰った事なかったので、ヌードルを選んだワタクシだったんだが、それが幸いした、っちゅーか、災いしたっちゅーか、なんちゅーか本中華(古い?)・・・。
寒い夜中、そんな時、人が喰いたいものは、味より何より<温もり>なんである。
皆の熱い視線はワタクシのヌードルの温ぬくい汁へと注がれておったのである(焼きそばの汁は捨てるもんね)。
「お願い〜! ぴーしゅけ〜汁飲ませて〜! 汁飲ませて〜!!!」
ワタクシのカップヌードルは男子・女子・教師(!)を問わず、そこに居た全員の手から手へ。口から口へと渡っていった。普通、あの年齢の男女が恋人同士でもね〜のに、カップの回し飲みなんか、先ずしね〜よ!
つまりは、それほど寒かったのだ。寒さは常識と理性を奪うのだ! 人間は寒さの前には本能のみの野獣ちゃんと化すのであ〜る。
温もりに飢えた野獣たちはワタクシから大切な食料を奪っていった(笑)。
いや。もうそりゃあ驚く程のスピードで。止める間なんてありゃせんわ・・。
人間ってのは、寒さと飢えには勝てねーんだな・・・との教訓を受けた17歳・秋のワタクシであった。
・・・ある意味、星の神秘よりも面白い真理だったかもねぇ〜。