035 旅の想い出
夫婦揃って、出不精なので、旅行などには、なかなか行かない。新婚旅行すら、結婚から4、5年経ってやっとこ出かけた。
そんな私ではあるが、それ故に「旅の想い出」は大事にしている。
私は旅に出ると必ず「ネコの置物」を買ってくる。
近年は、招き猫の密かなブームなのか、どこに出かけても結構な種類のネコの置物が売られている。木彫りのネコや、陶器のネコ。大きなものから、手のひらサイズの小さなネコまで。元来、無類のネコキチガイである私にとっては、マコトに喜ばしい限りである。
あまり大きいと置き場所に困ってしまうので、大抵手のひらに乗るサイズで、気に入ったネコを買って来る。そうして、帰ってきたら、そのネコの底にマジックで旅行の日付と場所を記入するのだ。
たったそれだけのひと手間でそのネコの置物は、私にとってとても大切なにゃんこに変わる。何年経っても、裏に返すと、そのネコから、想い出が伝わってくる。写真を見返すほど直接的ではないが、だからこそ、ほのぼのとした懐かしさが蘇る。
出掛けない、出掛けない、と言いながらも、数えてみると我が家のネコたちは、すでに10匹を超えていた。10匹分のネコ達に10回分の旅の想い出。
あどけない表情のネコ達が、今日も私を懐かしい想い出の旅へと誘いざなってくれる。