021 管理人、苦労する
以前「今日のぴーしゅけ」でも書いたと思うが、我が家はただ今社宅の管理人をやっている。順番で巡ってくるものなので、逃げようがない。全く金にもならんのに、妙に忙しいので困りものである。
さて、とある昼下がり、我が家の電話機が自己主張した。
「もしもし。お宅、社宅の管理人をなさってるんですよね?」
「はあ。そうですが、どんなご用件でしょうか?」
あ〜あ…また仕事だよ。今度は雨漏りかい?いや、最近雨降ってないな。水漏れかい?風呂釜の故障かい?
そう思いながら受話器を握っていると、
「ウチに変な電話がかかって来るんです」 などとおっしゃる。
「ヘンな電話といいますと?」
「若い男の声で、奥さんの下着が欲しい、とか、奥さん今ヒマなの?とか…」
「ヘンタイ電話ですか?」
「そうです」
「え〜〜っと…、そういうお話でしたら、ウチじゃなく、警察の方へ連絡された方がいいんじゃあないでしょうか?」
管理人は管理人なんであって、自警団じゃない。こういう相談をされても、ちょっと困るのである。
「はあ。でも、1回かかってきただけなんです。それなのに警察に電話して良いんでしょうか?」
そんなん、知るかい! と、言いたかったが、同じ社宅の住人である。確か、ここの奥さんは半年ほど前に結婚なさったばかりじゃあなかったか? 会った事はないケレド。
それなら、きっとまだ若い人なのだ。
お若い新妻だから、必要以上に恐怖を感じるし、常識的な判断もつかないのだろう。
私はそう自分をなだめた。ストーカー犯罪なども多発するご時世である。何かあってからでは遅いとの考えは正しいような気もする。
「奥さんの知っている声でしたか?」
「いいえ。全然知らない男でした」
「最近、何か変わったことはありませんでしたか?例えば下着を盗まれたとか」
「いいえ。別に」
そんなやりとりがしばらく続いて
「えーっと、奥さん。やっぱり気になるようでしたら、警察にお届けになるのが1番かと思いますが?」
「はあ、そうですね。そうしてみます。ところで、何番にかければいいんでしょうか?」
ちょっと待て! おまいさんはそーんなことも知らんのんか!
「110番じゃないんですか?」
「でも、それは緊急の番号ではないんでしょうか? 110番で良いんですかね?」
そんなん、知らんわ! しかし、そう言われてみれば…そうなのか?
「え〜〜〜っと、スミマセン。私もよく分らないんですが。そうだ! 近所の交番まで出向かれてみてはいかがでしょう?」
「ああ。それはイイですね。そうしてみます。どうもありがとうございました」
ここまで約30分。やれやれ。やっと納得してくれたか…。私は胸を撫で下ろした。そうだ、後学の為に確かめておきたいことがあるゾ!
「ああ、ところで奥さん。失礼ですが、お年はお幾つでいらっしゃいますか?」
「私ですか? 〇×歳です」
・・・てめぇ私より、△□歳も年上やんけ!!!
「この歳で、こんな電話がかかるなんて、恥ずかしいわ」
「いやぁ、きっとお若いんですよ。不謹慎ですけど、ちょっと羨ましいかもしれませんねぇ。はっはっは…」 この時の私は、多少引きつっていたに違いない。
「まあ、イヤだわ。ほっほっほ…」
「ほーっほっほ、ヒッヒッヒ…ヒクッ」
こうして、かなり妙齢なる新妻サマはご満悦で受話器をお置きになったのでした。
ヘンタイさん。相手の年齢はよく確かめて電話しましょう。そうでないと管理人がいらん苦労を致します。---っつーか、そんなアホな電話すんじゃねぇ〜 凸(ーーメ !!