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007 てふ介へ…

 「てふ介」と書いて、「ちょうすけ」と読む。
 私の実家で、10年近く飼っていた茶白のツートンカラーの猫の名前だ。

 よく、「いかりや長介」から取ったんですか? と尋ねられたが、冗談ポイポイ。飼い初めた頃は「長太郎」と呼ばれていた。 てふ介が我が家にやって来た頃、私は、恥ずかしながら浪人中だった。そこで、「幸運を呼ぶ招き猫になってくれよ!」 の願いを込めて、  「長者太郎」 略して 「長太郎」 と名づけたのだ。本来、ものすごく縁起の良い名前であった。

 それなのに、いつの間にやら、母は「ちょうすけ」と呼んでいる。 私のほうは意地になって、 「長太郎」 と呼んでいたが、猫も餌をくれる人の方が、より大事なようで、自分は「ちょうすけ」だと認識してしまった。  完全な敗北である。そういや、私は昔から母に勝てたことは一度もなかった。
 ちなみに、母によると、私はてふ介の 「ねーちゃん」 で、母はてふ介の 「お母さん」 となる。

 てふ介は、よく腹を下す猫だった。
 名前の 「ちょう」 が 「腸」 に通じて、良くなかったのかも知れない。 「名は体を表す」 という。しょっちゅう、ゲリして、 おしりの穴を真っ赤に腫らしていた。それなのに、家の中で粗相をしたことがない!これは大したことである。

 台風が来ていて、暴風でも、外に遊びに行ってしまうし、絨毯で爪は研ぐし、ケンカには弱いし、 近所の虚勢猫(つまり、オカマちゃん)に、求愛しちゃうし、イイトコなしの猫のようだが、とにかく、 私と母が、愛して止まない「てふ介」だった。

  てふ介は、今どこに居るのだろう?

 私たちは、彼の死を知らない。
 ある日、ぱたりと居なくなってしまった。しばらく前から、体が弱っていたので、多分…と思うだけだ。  家の中で粗相をしたことがなかったように、決して、自分の悲しい死も私たちには見せなかった。

 てふ介は、今どこに居るのだろう?  ねーちゃんは、チョーちゃんに会いたいよ…

(2000/11/03)

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