003 とっても怖い話 別名「病院へ行こう!」
さてさて。
奥様の名前はぴーしゅけ。看護婦さんの名前はダーリン(仮名)。
ごく普通の二人は、ごく普通に出会い、しごく真っ当な診察を受けた。
ただ、ひとつ違っていたのは、奥様は急患だったのです。
ある朝、私の人相が変わり果てていた。
顔の右半分が、黒っぽいできもので覆われている。「きゃあぁ」と叫びたくなるような恐ろしさだ。
その上痛い。とにかく痛い。もともと頑丈にはできていないので、熱や痛みには我慢強いほうなのだが、
じっとしていても思わず知らず、歯軋りしてしまうくらいの、とにかくこれまで感じたことの無い類の痛さだった。
咽喉もとのリンパも遠目にも分るほど腫れあがっている。
「これは尋常ではない!」 私はかかりつけの病院へタクシーを飛ばした。
皮膚科の外来は午後からだと知ってはいたが、そんなことが今現在痛みにのたうたんばかりの自分にとって、何ほどのものであろう。
「苦しい時の神頼み」。 痛いときには医者である。自慢じゃないが、私はある意味 「患者のプロ」である。
そのプロフェッショナルなカンが、「時は一刻を争う!」と告げていた。
しかし。
そのプロフェッショナルなワタクシメに、ダーリン(上記参照のコト)は…、ダーリンの野郎(否。当然女性なのだが)は
「午後から出直せ」と、抜かしたのだ。
顔見ただけで、乗車拒否されそうなタクシーの運ちゃんを拝み倒して、ようやっとたどり着いた病人にそれは余りというものではないか。
その上、ご丁寧にダーリンはこうもほざいてくださった。
「あなた、アレルギーなんでしょ。その程度で急患で来るなんて非常識よ」
確かに私はアレルギーの持病持ちだ。人生の大半はこの荷物を背負って生きてきた。しかし、だからこそ分る。
これは、そんなものではない!!!!
つい力が入ってしまったが、結局のところ。
私の病名は「帯状性発疹」。(医者は一目で診断を下した。)絶対安静、即座に点滴開始。発疹は右目の周囲にも出ていたが、
これが眼球に移るとヘタをすれば失明の危険もあるらしい。プロフェッショナルな私のカンは私の右目を救ったのだ。
さて、この話で一番怖いのは、失明の危機などではなく、ダーリンが「総合病院の婦長さん」だったということなのだが、
この恐怖が皆様にはお解りいただけますでしょうか…。
(ちなみにこのお話は3年ほど前の出来事です。)